月に選ばれた

第10話

ディラン視点

母は私の状況に気づき、目を見開いた。そして王の存在に気づくと、すぐに頭を下げた。他の二人の男が王の後ろに駆け寄ってきた。「わ、あの...」母のあまりの頼りなさに私は目を見開いた。母が強い人間だとは思っていなかったけど、少なくともこれよりはましだと思っていた。母は少し横に動き、私の姿が隠れていた場所から露わになった。

この機会を見逃さず、王は手を回して私の手首をきつく掴み、乱暴に彼の硬い体に引き寄せた。私は荷物の袋を落としてしまった。すぐに彼を押しのけようとしたが、彼の握る力はさらに強くなるだけだった。

「お母さん！何かして。お願い！」目に涙が溢れそうになったが、落とすわけに...