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第221話

ウイスキー。

私は上甲板に戻り、暗闇の中を見つめた。水面から吹き付ける風は冷たかったが、私はそれが好きだった。冷たい空気が肌に染み込み、骨まで冷やしていく。肌には鳥肌が立ち、背筋にはぞくりとした震えが走る。私はその感覚が大好きだ。凍えた暗い心をくすぐるような感覚。もう近づいていることが分かった、感じることができた。おそらくあと1時間、もしかするともっと短いかもしれない。そしてちょうど良いタイミングだ。暗い嵐の雲が陸地の方向から空を覆い始めていた。それが到達する前に船を停泊させられることを願う。

波が漁船の側面に激しく打ち付け、船は激しく揺れていた。水圧によって金属が悲鳴を上げる。陸地はすぐ...