最後の精霊狼

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第54話

ヴェラ

私は飛び起きた。

暖炉の火は消え、部屋は冷え切っていた。もうかなり前に火が消えたのだろう。雪は止み、誰かが苦労しながらドアを開けようとしている音が聞こえる。きっと雪と格闘しているのだ。夜の闇に乗じて、私は静かに立ち上がり、掛け布団を後にした。

階段を上がり、先ほど天井で見つけた出入り口に向かう。できるだけ音を立てないように、慎重に押し始める。もしこれが警備兵か、あるいは他のライカンなら、ほんの小さな音でも聞こえてしまうだろう。

出入り口が開き、屋根へと身を引き上げようとした瞬間、何かが私の足を止めた。ある匂い。

森の香り。

故郷の香り。

ノア。

「ヴェ—」彼が私を呼び始めたが、...