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第36話

――ヴェラ――

私はルーカスをかわして、彼と人影の間に立った。その姿からは敵意を感じ取れなかったので、私は数歩近づいた。

「お邪魔して申し訳ありません。私はヴェラといいます。こちらはルーカスです。もう失礼しますので、お邪魔してすみませんでした」

私は立ち去ろうと振り返ったが、一歩も踏み出す前に、その人影が口を開いた。

「ああ」彼は空気を嗅ぎ、「狼か?」

その言葉に私は足を止めた。今、近くから見ると、それが男性であることがわかる。そして、その目の色から、彼が盲目であることは明らかだった。

彼が手を差し出したので、私は慎重に近づいて握手をした。背後ではルーカスが接触に緊張しているのが感じられる。...