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第57話

汗が彼の強い背中を伝い、筋肉と肩が緊張し、しなやかに動くたびに流れ落ちていた。彼は巨大なパンチングバッグを打ちのめすことに没頭していた。

ジムの中に響くのは、彼の荒い息遣いとパンチの音だけ。

しかし私を驚かせたのは、パンチングバッグについた血の跡だった。そしてそれがどこから来ているのか、私には分かっていた。

怒りが血管の中で沸騰し、拳を握りしめた。彼はまたやっていたのだ。

「エース!やめて!」

彼の動きが止まり、揺れるバッグを止めようと両手で掴んだ。彼の幅広い肩が一つ一つの重い呼吸とともに上下し、彼が私の方に顔を向けた。暗く嵐のような灰色の瞳が、私の燃えるようなターコイズブルーの目と...