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第56話

質問をした途端、彼の全身が緊張した。彼は深呼吸をしながらも、目を私から逸らしたまま、顎をぎゅっと引き締めていた。

「ローズバッド、俺たちはやっと結ばれたばかりだ。俺の人生の苦い章は、この新しい始まりから切り離しておこう、いいかい?」灰色の瞳が私と交わった。そこには私に理解してほしいという切実な思いが宿っていた。「過去を蒸し返したくない。今の俺はただ、お前と美しい新しい思い出を作りたいんだ」

彼の過去について話すことが彼を傷つけるのは分かっていた。でも、このままにしておくことはできなかった。アーサーが話していたことは、彼の父親の自殺と関係があるという直感があった。他にも何かあるかもしれない。...