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第52話

振り向くと、隣に暖かい体を求めて手を伸ばしたが、そこには空虚しかなかった。しわくちゃのシーツと彼の残り香だけ。眉をひそめ、目を開けて周りを見回した。

薄暗い部屋に彼の姿はなかった。バスルームのドアさえ、昨夜私たちが残したままの状態で半開きになっていた。

彼はどこに?

ベッド脇のサイドテーブルの時計に目をやる。朝の三時。こんな早くどこへ行ったのだろう?

そしてその時、涼しい風が私の顔に触れた。バルコニーのガラスドアが開いていた。

毛布を体に巻きつけて立ち上がろうとすると、下半身から走る痛みに思わず息を飲んだ。そして昨夜の記憶が洪水のように私の心に流れ込み、頬を熱くした。

全身に心地よ...