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第21話

新鮮なスパイスとソースの香りがキッチン中に漂い、特別なイタリアンディナーの準備が整っていることを告げていた。そしてオーブンの中で焼かれている甘い香りに、私は思わず唾を飲み込んだ。

お腹の空き具合はそれによってさらに増した。一日中何も食べていなかった結果だ。でも、突然姿を消した男性のことで頭がいっぱいだったのだから、食べられるはずもなかった。

「エム、来てくれて嬉しいわ。結婚の準備で忙しくて、一緒に過ごす時間が全然取れなかったから」とテスは言いながら、スパゲッティにバジルを加えた。

私は頷いた。「うん、でも心配しないで。しばらくはどこにも行かないから、それを取り戻す時間はたっぷりあるよ」

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