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第96話

「奥様、どちらへ行かれるのですか?」

「個人的な用事よ。ダンジェリ様に知らせる必要はないわ。彼を邪魔しないで。今は奥様と結婚記念日をお祝いしているところだから。皆さんの連絡先は全部持っているし、必要があれば助けを求めるわ」

「でも、奥様...」

「すぐに戻るから、言った通りにしていてちょうだい」

彼は頷いたが、その顔には失望の色が浮かんでいた。私はリカルドに出かけたことを彼が告げるかどうかなど気にしていなかった。長居するつもりはなかったが、行かなければならないという気持ちがあった。

GPSに場所の名前を入力すると、見覚えのある建物が見えたとき、心臓の鼓動が速くなった。しばらく車の中に座って、...