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第78話

フェリックスのキッチンに、小麦粉の粉が陽光の中で輝いていた。干し草の山のようにぼさぼさの髪に小麦粉を被ったフェリックスは、すでに溢れんばかりのボウルに、さらにすり切り一杯の小麦粉をすくい入れながらくすくす笑っていた。

「富士山より、もう少しカップケーキの生地らしくしてくれない?」私は冗談を言いながら、鼻に降りかかってきた白い粉を避けた。

「ねえ、スプリンクルはいくらあっても足りないんだよ。幸せをもたらすんだから」彼は劇的に手の粉を払い、カウンターに小麦粉の小さな吹雪を巻き起こした。私はうめき声を上げたが、内なる潔癖症と、思わず浮かんでくる笑顔が戦っていた。

「幸せ?それとも小麦粉まみれの...