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第51話

太陽がやっとカーテン越しに指を伸ばしかけた頃、私はフェリックスの家に足を踏み入れた。今日の空は暗く、雲が青空を覆っていた。雨が降りそうだった。

空っぽの部屋に掃除機の静かな唸り声が響き、家政婦としての私の仕事の日課には馴染みのある交響曲だった。

私はリビングルームを飾る家具のほこりを丁寧に払うという細やかな作業から始めた。隅にある古い柱時計が鳴った。私には従うべき日課があった。やるべき仕事が。時々、これが単なる仕事だということを忘れてしまう。ここでは雇われた身なのだ。フェリックスの家で。

キッチンに移動すると、シンクには乱雑に積まれた食器があった。焦げた食べ物がついたフライパン。私は一人...