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第32章 是非をわい曲する

二人の警官に睨まれても、高橋直哉の表情は微動だにしなかった。

彼はゆっくりと顔を上げ、鈴木隊長を一瞥して、静かな声で言った。「一方の言い分だけで私を逮捕するんですか?鈴木隊長、そんな法執行は独断的すぎるのではないでしょうか?」

「前田健太は支払いを滞納し、私が債権回収に来たところ、彼は返済するどころか、警備員に暴力を振るわせました。私は正当防衛をしただけです。それが間違っているというのですか?」

「前田健太を逮捕せずに、私たちを警察署に連行する。国から与えられた法執行権を、こんな風に使うんですか?!」

最初は穏やかだった口調が、最後の一言では刃のように鋭く、鈴木隊長の胸に突き刺さった...