第814章

パトリックは車に乗り込み、その暖かさに身を包んだ。

人はうだるような夏には凍える冬の寒さを恋しがり、凍てつく冬には夏の暑さを待ち望むものだ。

ヴェラが恋しく思うのは、故郷の暖かさだった。少なくともそこなら、歯の根が合わないほど震えることもないだろう。

モリーから様子をうかがう電話があり、ヴェラの心中を察したように言った。「ヴェラ、もう少しの辛抱よ。冬は過ぎて、夏が来る。季節は巡るんだから、今を楽しまなきゃ」

モリーは変わったな、とヴェラは思った。

「大丈夫？」と彼女は尋ねた。

モリーはしばらく黙っていたが、やがて唐突に切り出した。「ヴェラ、私、セバスチャンとの間に赤ちゃんが欲しいの...