第60話パトリシアは熱がある

時間の感覚が曖昧になるほど泣き続け、パトリシアはついに感情をすべて吐き出し、泣き疲れた。そして彼の腕の中から身を引き、恥ずかしそうに俯きながら顔の涙を拭った。

だが、手が頬に触れた途端、彼女は思わず痛みに息を呑んだ。さきほど泣きじゃくっている間は、その痛みにまったく気づかなかったのだ。

今になってようやく、顔が焼けるようにヒリヒリと痛むことに気がついた。

マーティンはすぐに彼女の手を離し、優しく言った。「顔が痛むのか？　ここで待ってて。氷をもらってくる。医者が、氷で冷やすと痛みが和らぐと言っていた」

パトリシアは怖くなり、彼に行ってほしくなくて、その手を掴んだ。

マーティンは彼女の...