第112章 私の周りの『ミスター＆ミセス・スミス』

ロリー・バーナーズ　ＰＯＶ

水曜日、夜。

俺が藤原春のアパートに入ったとき、彼はスカッシュをしていた。

そう、こいつはこの巨大なマンションの中にスカッシュルームまで造りやがったのだ。

ラケットを親の仇のように振り回す姿、髪から飛び散る汗。俺はすぐに彼の怒りを感じ取った。

俺は傍らに控える隆に疑問の視線を投げる。彼はやれやれといった顔で肩をすくめ、氷の入ったウイスキーグラスを俺の前に置いた。

ようやく春が打ち終え、大判のタオルを手に戻ってきた。

彼は窓際の安楽椅子に腰を下ろすと、サイドテーブルのグラスを手に取る。軽く揺らすと、カランと氷が触れ合う音がした。

春は口を引き結び、口...